勝手口の鍵は必ず閉めるように
首都圏で住宅を狙った強盗事件が相次ぐ中、広島県内で「トイレを貸して」などと言って民家を訪ねる不審者情報が10月以降、少なくとも10件以上、県警に寄せられている。県警は資産状況や家族構成を把握する「下見」の可能性があるとみて警戒を強めている。 県警によると、不審な人物の訪問は広島市佐伯区や東区、安佐南区のほか、廿日市市や東広島市で1~4件発生。単独か複数人で日中や夜間に「トイレを貸して」「ジュースをくれ」などと言って訪れ、家族構成、家が留守になる時間帯などを聞いてきた。30代くらいの男2人組が県外ナンバーの車で訪れるケースもあった。 首都圏の事件では、事前に現場周辺でリフォーム業者などを装った不審な訪問が確認されている。山口県光市では10月、民家に強盗に入ろうとしたとして関東地方の14~18歳の中高生3人が強盗予備容疑で山口県警に逮捕される事件も起きた。 中国地方の5県警は、住宅街や山間部のパトロールを強化するなどしている。広島県警は、施錠の徹底▽知らない相手を家に入れない▽個人情報を伝えない―などの対策をホームページや防犯アプリで情報発信。「怪しいと感じたらすぐに110番して」と呼びかけている。
朝食を済ませくつろいでいるときに
「トイレを貸して」。10月に不審な男の訪問を受けた広島市内の80代女性が中国新聞の取材に応じた。男は勝手口から無断で入り、女性がトイレを貸すと「両替してくれ」「1人か?」とも言ったという。「(強盗などの)下見だったのかもしれない。最初から断ればよかった」と女性は悔やむ。 男が勝手口から入ってきたのは10月10日午前8時半ごろ。朝食を済ませ、リビングでくつろいでいるときだった。突然、台所の勝手口が開き、シャツに黒髪の30代くらいの男が現れた。 男は黒色のかばんをテーブルに置くと「トイレを貸してくれ」と告げてきた。状況がつかめないまま女性が場所を教えると、数分後に男は戻ってきた。すると小銭を握り「両替してくれ」と言う。「お金はないです」。そう返すと「1人か?」とも聞かれた。とっさにうなずくと、返答することなく男は勝手口から去ったという。
勝手口の鍵は必ず閉めるように
女性はその後、町内会長を通じて警察に通報した。首都圏で相次ぐ強盗事件についてはニュースで知っていたが、当日は結び付けて考えることはできなかったという。両替は、現金がある場所を探るためだったのではないか、と今は思う。 「玄関なら追い返したり、断ったりできたが、勝手口は盲点だった。鍵を閉めていなかったことや問いかけにうなずいたことを反省している」。現在、自宅には防犯カメラを設置し、警備会社とも契約した。洗濯やごみ出しのために開けていた勝手口の鍵は必ず閉めるようになった。 「下見や強盗はいつどこで起きるか分からない。人が入ったら急変する可能性もある。とにかく中に入れないことが大切だと思った」と話す。